かち割りダイヤモンドロゴ


作成時期・97年12月

画像作成・GATEWAY2000 P5-133

使用言語・VC++




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予備知識として、次の2つのことを理解してください。

Wigner-Seitz cells について

結晶とは並進対称性を持った粒子の配列です。その配列の構造や対称性を明確化させるために しばしば Wigner-Seitz cells を考えます。Wigner-Seitz cells とは、空間のある座標が どの粒子に最も近いかで領域分けした時の泡構造のことを指します。 この泡構造を見ると対称性のズレが一目でわかります。泡構造の境界線(面)の作図方法は 一般にはある粒子と近隣の粒子との垂直2等分線(面)を作り、粒子に最も近い線(面)を つなげていくと完成します。これはボロノイ構造とも言います。

調和ポテンシャル中の電子の古典安定配置について

電子が複数個あると、お互いにクーロン斥力が働き、反発し合います。 それで、電子を外力の無い空間中に配置すると離れ離れになって散ってしまいます。 しかし、これら電子を全体として一つに固める別の力があると、 古典的には電子はある配置を取って安定してしまいます。 この「力」として、ここでは調和ポテンシャルを採用します。つまり、2次元なら

V = x2 + y2

で、3次元なら

V = x2 + y2 + z2

です。

さて、2次元調和ポテンシャル中の電子の古典安定配置を考えてみます。 100個ほど電子を用意し、2次元調和ポテンシャルの中に放り込むと 全体として円状の配置を取ります。ここで、その配置に対してボロノイ構造を作図すると、 以下のように平面が多くの多角形で分割されます。

2次元ボロノイ構造

ギョッとされた方も多いかと思います。まるで、カエルのタマゴです。 しかし、神秘的とも言えます。( ちなみに、これは基底状態ではありません。 基底状態はもっときれいな対称性を持ち、ボロノイ構造もある意味でつまらない形になるので、 ここでは準安定配置を使いました。)

つぎに、3次元調和ポテンシャルを考えます。このポテンシャル中に 80個の電子を放り込み、今度は基底状態を求めます。すると電子は 全体としては球状の配置を取ります。具体的には原点に1個、その回りに 19個の電子がおおよそ球面上に並び、その回りのさらに大きい球面上に 60個の電子がおおよそに並びます。この「球面」を以後シェルと書きます。

この構造を立体視可能な図でもって表現すると、以下のようになります。 交差法、平行法、どちらでもOKです。 見にくいですが、大きいシェルの中に小さいシェルが入っている構造がわかると思います。

3次元調和ポテンシャル中の安定配置

さて、これのボロノイ構造を考えます。3次元ですから、ボロノイ構造は 空間を多面体で分割することになります。各多面体はそれぞれ一個の電子を含みます。 従って、全多面体は3つの層に分けることができます。最も内側に1つ、 そのまわりに19個の多面体、そしてその周りに閉じていない60個の多面体が できます。最も外側の閉じていない多面体はそのままでは図示できませんので、 十分おおきな球面でカットします。

この構造を各層に分けて図示してみます。最も外側の層は

最も外側の層

こんなふうに見えます。この層の各多面体は閉じていないので、凹状の領域、 ちょうど蜂の巣のような構造が見られます。

つぎに、この層を剥ぎ取ってやります。

動画

すると、第2層目が姿をあらわします。

第2層目

19個の多面体がぎっちり詰まっているのがわかります。さらに、この層を剥ぎ取ってやると

動画

中から1個の多面体(当然19面体)が出てきます。

1個の多面体

ここでは外側から順に多面体を見ていきましたが、一度に見る方法は ないものでしょうか。無いわけではありません。各多面体の面を 半透明にすればいいのです。このアイデアでもって、元々のボロノイ構造を 図示すると

半透明なボロノイ構造

こんなふうになります。サランラップでできたボロノイ構造のようです。 しかし、見やすいとは言えません。電子数がこのように大きいときは やはり層ごとに見ていくのがよいのかもしれません。

では、電子数をもっと下げてみて、半透明の技をつかってみます。

電子数30個の系を考えます。30個の電子の系の基底状態は、内側に4つ、 外側に26個の2重シェル構造になります。これのボロノイ構造を作り、 それを半透明な多面体で表示してみます。外側の多面体は最初から取っ払って 内側の4個の多面体のみについて図示すると、

まるでダイヤモンド

となります。色を少し変えてみました。すると、形のアバウトなダイヤモンドのような 図になりました。半透明なポリゴンで構成されているため、 さしずめ屈折率 1 のガラス質の物体というところです。

この4個の多面体をパカッと割ってみると、以下のようになります。

パカッと割ってみる

驚くべきは、これらの精緻な多面体は、調和ポテンシャル中の電子とそのボロノイ構造の、 2要素のみから生まれるのであって、形そのものには何も人為的な操作を 施していないことです。それでいて美しいダイヤのような物体が得られることは まことに自然と数学の織り成す神秘であります。


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   メール:Morikawa_Hiroshi@yahoo.co.jp