位相で見る波動関数ロゴ

作成時期・97年5月

改良・97年9月

画像作成・GATEWAY2000 P5-133

使用言語・VC++




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 量子力学を最初に学んだのは大学1年の時の「構造化学」という授業でした。 波動関数のイメージも湧かぬまま、悶々と「定常状態」を求めていたものです。
 その時、最初に学んだ具体例は「箱の中の自由電子」でした。 今でこそ基本事項に該当する項目ですが、 この極めて基礎的な具体例もコンピューターで掘り下げてみれば なかなかおもしろいものがあります。それをここに公開します。

 いま、2次元平面において、一辺の長さがπの正方形の井戸型ポテンシャルを考えます。 エネルギーにまつわる係数や、規格化因子を無視すると、基底状態の 波動関数は

ψ = A sin x sin y
となります。これを図示すると

井戸型ポテンシャル基底状態

となります。ここで、振幅は作画の明るさで、位相は色で表現しています。 位相と色との対応はが一対一に対応しています。対応関係は

位相と色の対応関係

となっています。複素振幅 A は任意なので、上の場合、実は図の色は 青でも赤でもなんでもいいことになります。

 さて、授業で習う第一励起状態は

ψ = A sin 2x sin y と ψ = A sin x sin 2y
で、前者を図示すると

井戸型ポテンシャル励起状態

となります。ここでもAは任意なので、作画の色は任意ですが、位相はπだけ隔てているので、 一方が青なら反対側は黄色、と作画色は右と左で補色の関係にある色を使う必要があります。

 この第一励起状態は解が二つあるので、解の重ねあわせが可能で、例えば

ψ = A ( sin x sin 2y + sin 2x sin y )
を図示すると

井戸型ポテンシャル励起状態の重ね合わせ1

となります。ところで、これらは全て振幅が実数です。振幅が実数なら、位相は 局所的にそろっているので、その時間発展は、位相がその場で変化するだけです。 そこで、波動関数の美的変化を引き出すために、虚数を係数にひっかけてみましょう。

ψ = A ( sin x sin 2y + i sin 2x sin y )
を図示すると

井戸型ポテンシャル励起状態の重ね合わせ2

となります。今までのように特定の位相だけでなく、全ての位相が出てきました。 こんな状態が実際にあるかどうかは全く別問題ですが、物理を数理として見た時、 きわめて特徴的な状態だと思います。

 この波動関数にexp(it)をかけて時間発展させると、さらに興味深い図が得られます。 各位相は時間発展にともない、大きさを保ったまま偏角のみが変化し、全体として 波動関数がくるくると回転しているように見えます。

時間発展動画1

このような「位相の移動」は、運動量の逆数に等しいことが証明できるので、上図は 箱型ポテンシャルにおいて角運動量を持つ状態だと言えます。 実際、角運動量演算子をこの波動関数にかけて積分して、角運動量の期待値と、 そのゆらぎを求めることができます。

 同様にして

ψ = A ( sin x sin 3y + i sin 3x sin y )
の時間発展を図示すると

時間発展動画2

となります。中心から横に位相が流れ出て、そのあと上下に分裂し、再び 中心の上下に戻ってくる様子が観察されます。渦が4つある波動関数と言えます。 この場合、渦の向きがそれぞれ隣接する渦と逆向きなので、角運動量の期待値は打ち消しあって0です。

 さらに高次の波動関数

ψ = A ( sin x sin 7y + i sin 7x sin y )
の時間発展を図示すると

時間発展動画3

となります。このあたりに来ると一概に渦とは呼べなくなります。 周辺部は、位相が局所的にそろっていて、位相の移動が定義できない状態になっています。

 直感的には、位相の移動が定義できない状態とはすなわち、位相の移動速度が無限大であることを 意味します。これは運動量が0に対応します。


 次に話を3次元にします。水素原子の電子の波動関数の角度依存性を表す球面調和関数を図示する際、 よく出てくるY20は、教科書などでは「極座標図」を用いて

球面調和関数Y20
(※「球面調和関数」より引用)

と図示されます。極座標図とは、角度変数を変数、関数の絶対値を関数値として、プロットしたときの図です (複素数の扱いについてはいくつかバリエーションがある)。 球面調和関数の図示といった場合、十中、八、九はこの極座標図を用いて表示されます。 このY20は極めて特徴的な形をしているので、球面調和関数と言った場合、真っ先にこの形を イメージする人も多いと思われます。しかし、これは言わば「文化」に過ぎず、球面調和関数とは本来 もっと単純です。それを見るために、Y20を今まで使ってきた位相?色相、振幅?濃密の関係で 図示すると

球面調和関数Y20を位相?色相、振幅?濃密の関係で表した図

となります。(これも色には任意性があります。)極と赤道部のみの振幅が大きく、 その位相はπだけ離れているので、このようににります。

 他の場合ではどうなるでしようか。 高次の球面調和関数である ( Y5,3 - Y5,-3) を「極座標図」で表すと

球面調和関数Y53?
(※「球面調和関数」より引用)

と迫力のある図になりますが、これは例の図示方法であらわすと

球面調和関数Y53?を位相?色相、振幅?濃密の関係で表した図

となります。結局、高次になるに従って、格子間隔が球面上で細かくなっていくわけです。

 一般に「球面調和関数の図示」というと、今までの例のように解を足したりひいたりして虚数部分を とばすのが慣例です。なぜなら「極座標図」で複素数は扱えないからです。しかしこの足かせも 例の図示方法を使えば複素数をとばさなくてすみます。たとえば、先ほどの例のY5,3は

本来の球面調和関数Y53を位相?色相、振幅?濃密の関係で表した図

となります。これは角運動量演算子のZ成分の固有関数になっていて、固有値をもちます。したがって 時間発展させるとくるくる回転します。

時間発展動画4

以上、内容的にはあたりまえなことを書きましたが、これらを実際に図示した本は あまりないものと思われます。なぜなら、カラーの本は高いからです。 位相を色で、振幅を濃密で図示するのがいかに役立つかおわかりいただけたでしょうか。



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